もうちょっとだけ子どもでいよう

岩瀬成子著

理論社 1992

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 こうありたい自分がいて、でも、なかなかそうはなれない自分がいる。そのギャップがじれったくって、あせってしまうとき、呪文みたいに唱えてみたい。『もうちょっとだけ子どもでいよう』(理論社)というタイトルは、とてもすてきな響きを持っている。
 物語の中心は姉妹だ。11歳の咲は、男の子にいちゃつくクラスメートになじめず、好きな新くんにも声をかけられない。13歳の光は、あまりにフツーすぎる自分がいやで、深夜放送にドラマチックな架空な身の上話を投稿する。ふたりが出会う人と事件が、淡々とした語り口で展開する。
 それぞれ「らしく」ないキャラクターがいい。小4にして「わたし、あんまり子どもと遊ぶのって好きじゃないですから」というみお。「立派な母親でいたい」というプレッシャーゆえ、見当違いな悩みをしょいこむ光たちの母。おとなも子どもも不相応にしてれば済むってことがない、ボーダーレスな世の中になってきたんだね。(芹沢清実)
朝日新聞ヤングアダルト招待席92,08,30

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