マイゴーストアンクル

ヴァージニア・ハミルトン

島式子訳、原生林

           
         
         
         
         
         
         
    
 日本の幽霊は、成仏しきれず、恨んでいる人のところへ出る、というのが相場で、どうも湿っぽい。この『マイゴーストアンクル』に登場する幽霊は、だいぶ趣が違ってクールだ。
 15歳の少女ツリーが見るブラザー叔父さんの幽霊は、パリッとしたスーツを着て完璧にスマート。ツリーは見るだけで心が躍るほどだ。ブラザーは何も言わない。ツリーと兄のダブがまだ小さかったころの光景を、少しずつ再現してふたりに見せてくれる。
 ダブはとてもハンサムで、女の子にもてる。でも、何でもゆっくりしかできないし、時々ひどく苦しみだす。母親のマブィは、たまにしか帰ってこないから、ツリーがダブの世話をしなくてはならない。ダブの病気は何だろうか? ブラザー叔父さんは何のために過去を見せるのか? 
 たんたんとした展開なのだが、ミステリーのようにいくつもなぞがちりばめられていて、どんどん引き込まれて読み進んでしまった。
 孤独だがこぢんまりと居心地のよい兄妹の物語が、母親とその家族の物語にからめられ、さらに一家族の物語が、もっと古い歴史にむすびつけられていく過程は迫力たっぷりだ。母方の祖父は逃亡奴隷、父方の祖母はチェロキー・インディアンという作者ならではの、スケールの大きさと深みがある。(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 92/05/31

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