リスの王国 ─ミンクテイルたちの森

ジャネット・テイラー・ライル:作
金原瑞人:訳 講談社 1995.2

           
         
         
         
         
         
         
     
 アンバーが、父親と言い争いになって家出をし、野宿にと寝袋をおいた所が森の上の世界でした。
 森の上はミンクテイルという種類のリスたちの世界で、リスの言葉でコミュニケーションをとり、長老を中心に社会生活が営まれています。リスのブラウンナットとウッドバインという姉弟がアンバーに興味をもちます。森の下の世界は人間社会のことで、アンバーとウェンデルという姉弟がリスの世界に興味をもちはじめます。
 アンバーが森で野宿した日、父親は気分が落ちつかず家の周りにいるリスに腹をたて、ウェンデルを伴って銃をもち森へリス狩りに出かけます。森の上へ銃を撃ったことで、ブラウンナットがけがをし、アンバーに連れていかれて大騒ぎ。
 侵入者はやって来るは、銃で撃たれるは、誘拐されるはで、リスたちは自分たちのこの世界を守る為に会議をひらきました。バーカーという野心家が扇動して戦争をはじめ、長老にかわって指導者になり世界を支配していきます。平和な世界はこの時から森の下の世界と戦争体制になり、森の下では、リスは有害な動物だとして絶滅させようという運動がおこります。
 森の上と下での世界がまるで鏡のように、おろかな戦争へとすすんでいくのです。それを止めさせようと、森の上ではウッドバインとローレルが策を考え、森の下ではアンバーとウェンデルが知恵をしぼります。森の上の動きと森の下の動きを交互に追いながら、物語は進んでいきます。
 この物語では戦争へつきすすんでいく力のすごさや、それをおしとどめることのむつかしさが見事に描かれています。(山田千都留
読書会てつぼう:発行 1996/09/19