わたしが子どもだったころ

ケス卜ナー作/高橋健二訳 
岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 これはあのドイツの子どもの本の作家、エーリヒ・ケストナーの〃半自伝〃です。
 ケストナーもいささかテンポがあわなくなってきました。
 『飛ぶ教室』や『点子ちゃんとアントン』も初めて読む大人にはちょっときついでしょう。
 呼吸をあわせることができれば別……ですが。
 でも自分が子どもだった頃を書いたこの本だけは、大人になってから読んだほうがよくわかる……と思うよ。
 子どもの時に読んだって悪かないけどさ、子どもがおもしろいと思うとこって、お母さんと旅行いったリ、部屋の中に洗潅物がぶらさがったりしてるとこなのよね。
 でも大人になって読んだらびっくリ!
 ケストナーのお母さんて、もの凄く子どもに依存していて、まさに一呼吸一呼吸が、エーリヒ坊やのためにって感じで、だからケストナー少年はいつも一番、いつも優等生、いつもお母さんの自慢の息子であらねばならなかった…のよ。
 もちろんケストナーは母親を愛してるから悪くなんて書いてない。でもせいいっぱい冷静に、母親にしがみつかれた子どもがどんなに苦しいものか、描いてるのよ。
 というわけで、別に子どもの本が好きな人じゃなくても、今この本の読者はいると思います。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)