1999年オススメ本

           
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
     
 「翻訳の世界」で毎年ベストテンを頼まれる。
 順位をつけることにはそれほどイミはないが、そういうことを考えると一年間の整理はできるので、もう一度優れた本を思い出して覚えるには都合がいいし、いざそうやって考えてみて初めて今年はほとんど科学ものしか思い浮かばないことに気づく・・・。
 つまり去年の私の興味と関心はそこにあったのだといまさらのように気づくのだ。
 というわけで"翻訳"というからには日本の本は入らない・・・という条件で・・・。

 まずはたらくくるま」
 "ほねほね=@"うちゅうひこうし≠ノつぐバイロン・バートン三冊目ですね。佑学社がなくなっていなかったら絶対出ていたろうと思うが、つまり前の二冊は復刊だけど、今度のは完全に新作ってこと。出版社はあいかわらずインターコミュニケーションで東・日販通していないので欲しいかたはお申し込みを。
 自分で製作したので自画自賛だけど、やっぱり何度見ても色とデザインが素晴らしい。
 前の二冊より切れがいいくらい・・・。
 一九八七年作でバートン57才の時のものでございます。こうなると最近作もやっぱり見たいものよのう・・・と思うねえ。
 クレーンやトラックを(つまり車を)使ってビルを建設する話だが、いつも通りシンプルかつダイナミックで前むき、明るい。
 次のアリキと同じく、ツルハシやシャベルを持って歩いてる作業員の中に女性もいるし人種もさまざまだ。
 こうみてみると日本の絵本の中には外国人って出てこないな、と思う。
 在日朝鮮の人たちの話も、昔の・・・ではなくて今のアイヌの人々の暮らしもろくすっぽない・・・。意識して作らないのではなくて、初めからそういう人たちが存在するってことを意識してないような気がする・・・。
 「はたらくくるま」のような日本のビルの工事現場にはあたりまえのようにいる外国人労働者の人たちもその家族や子どもも当然出てこない・・・。
 ねえ、アンタにいってんだよ、福音館!
 ごくフツーの、どこにでもいそうな平凡な子ども・・・を主人公にしているようでいて、そういう子って一部でしかないんだけどな、ホントは。
 私の学区の小学校には黒人の子もいるし、白人やフィリッピンの子もいるし、ハーフもいるし(でもホントはダブルだよね)、ブラジルからかえってきた(といってもいいのかな?)移民三世か四世の子もいる。
 なにかのはずみできょうだいはいないの?ときいたら前はお兄さんがいた・・・というのでびっくりすると、何年か前に両親がリコンして母親は彼女を連れて日本へ・・・お兄さんは父親とブラジルへ残ったのだそうだ。
 一瞬彼女は、まるで年とった女のような表情で、ブラジルは遠いわ・・・とつぶやいた。
 ので急きょ、図書室の"えいご≠ニいうシールを"がいこくご≠ノ変更することにする。
 少なくとも今でも、コリア、タガログ、英語、スペイン語、ポルトガル語・・・は必要だ。
 "せかいの子どもたち≠フようなシリーズのなかのそこの国の本も。でもこっちはバラ売りしてくれそうもないなー。
 もし彼女がポルトガル語をかけないと、お父さんやお兄さんに手紙もかけない、ということになる・・・。
 そういう子どもたちは今日本に何万といるはずだ。作ってくれよ、福音館! あんたしか、頼れるところはないんだからさっ。
 おっと、話がずれた。
 あとちょっと難しいのとあまりにもアメリカ的なので子どもたちはわっととびつかないがしらべ学習にはありがたいし、魅力的な科学絵本の"フリズル先生のマジックスクール≠フ新刊も。
 前に佑学社で出ていた(だからつぶれていた)アリキの"恐竜博物館≠フシリーズも出しました(だから近くの図書館にリクエストして! 学校図書館は買って!)。リブリオ出版よ。
 「水のしずく」。のけぞるほど写真がカッコいい。一滴の水が落ちたときに表面にできるクラウンはもちろん、卵がコップの中の水に落ちる瞬間なんて、こんな美しいの? というくらい美しい・・・。絶句もんの一冊。
 水といえば12月に出た「イグルーをつくる」がまたおもしろい。翻訳は千葉茂樹氏。三冊だせば二冊は当たり!! という高打率を誇る訳者です。
 ずっとどうやって作るのかと思ってたけどこれでよくわかった、
 あっ、千葉さんの新作で「雪の写真家ベントレー」というのも出ました。これもいい!
 さ・え・らからは珍しく大型絵本で「オールド・ブルー」が出た。
 わずか五、六羽しかいなくなってしまった小鳥の種を、緑の豊かなとなりの島へそっくり移動させ、なおかつ卵をかえせなくなっていた彼らのために卵を他の取りの巣に入れ、またそのかえったひなをもとの巣にもどす・・・。というやりかたを考えつき、実行した人間の学者たちと、その期待に応え、本人はそんなこと思ってなかったろうけど十三年も生き、たくさん卵を生んでくれた一羽のメス鳥、の物語である。
 日本のトキのことを書いた「最後のトキ」(金の星社)と読み比べてみるといいよ。
 ホントにハァ〜、になるから。
 あすなろの「もしもあなたがドレイだったら」もハードだが良い本だった。
 ドレイだけでなく、この問いはありとあらゆる場合に使える。そうして私たちの土台をゆさぶるのだ。
 「三びきのコブタの本当の話」以来、ウケているシェスカとスミスの二人組の「算数の呪い」もメッチャおもしろい絵本だった。
 年令フリー、年はいくつでもこの本が好きな人は好きでしょう。
 軽いが「オレさまは猫だぞ!」も子どもたちにウケるでしょう。一匹の子ねこが、オレの一番好きな色をあててみろ! という色の絵本だけど答えはだいだい色・・・だってお母さんの色だもの! というオチなのよ。
 悪い人から身を守るための本・・・「とにかく叫んで逃げるんだ」も必要な本。
 東欧のパウォスカーの「小さな小さな王さま」、かんたんなしかけ絵本だけど、とにかくこの人のデザインって絶品!
 「視覚のミステリー」は写真によるだまし絵。
 このカメラマンが前に作ってた「ミッケ!」のシリーズはおたくっぽくて好きじゃなかったけどこれはまったくおたくのにおいがしない。これからもこっちの路線でいってください、よろしく! の絵本。

 物語の関してはひこさんがやってくれていると思うので最近は手抜き。
 "シーラス≠フ新刊「見えない道のむこうへ」、あとはミステリばっか読んでいるような気がする。
 「穴」"ハリー・ポッターも金原氏の訳したインディアンものも五部作もぜーんぜん読んでない。なんていうか、最近の物語には、はまれないというか、つらい・・・。
 しかたがないので今さらながらのクイーンだのブラッドベリだのカーだのを読んでいる始末。
 岡本綺堂の「半七捕物帖」、文庫になったのでやっと読めたけどよかったよ〜ん。
 "あご十朗<Vリーズも出ないかしら。
 てなわけでこれで去年の報告はおしまい。
 今年もよろしくおつきあいのほどを。

 あっ、今年、おもなレンサイはですね〜
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 読売シンブン
 北海道シンブン
 てとこです。「母の友」はクビになりました。ではまたー。
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(書き下ろし)