アルメニアの少女

デーヴィッド・ケルディアン作
越督道雄訳 評論社

           
         
         
         
         
         
         
     
 本の装幀からいって、これを大人の本棚に入れているところも多いでしょう。地味だしそんなに評判にならなかったし、アルメニア自体、日本にはまだなじみが薄いし、このタイトルだけだと戦争文学には思えないでしょうが、これも〃ホロコ‐スト〃ものの一冊です。
 ナチスがユダヤ人を虐待していたことを知らない者はいないてしょうが同じ頃にトルコ政府がトルコに住んでいたアルメニア人たちを虐殺したことを知ってる人は少ないでしょう。
 彼らはいきなり家から追い立てられ、何千キロもの旅をさせられ、その大部分が死んだそうですが、トルコ政府はまだそのことを認めていないんじゃなかったかな。
 これはその旅を生きのびた一人の女の子の話です。彼女が家に帰り着いた時、三十人近くいた家族のなかで生き残っていたのは五、六人……しかも彼女は、家へ帰リたい、ただそれだけにしがみついて生きのびたのに、帰ってきた時には違う旅をした家族とはもう話せない、一緒に同じ目にあった人とでないと共感できなくなっている自分に気がつき、うちのめされるのです。
テレビ放送されて評判になった山崎豊子の『大地の子』も食料もなしに囲い地に押しこめられ地獄絵図と化した『チャ-ズ』も、日本軍の捕虜になったアーネスト少年の記録(ごめん、タイトルが出てこないよ〜)などは中国もの……探せばまだいくつも出てくるでしょう。
 十八歳以下の人たちが主人公のものは、やはり大人の書いたものと一味違って独特です。大きい図書館は集めたほうがいいでしょう。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)