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今年も、町中にあるマンション四階のわが家のベランダに、野鳥たちがきてくれました。 三年前の冬、家人がミカンの輪切りとヒマワリの種などを置いてみたら、程なくメジロやシジュウカラがやってきたのには驚きました。それに、間近に見る野鳥の美しいこと、たちまちとりこになりました。 見ていると、食性の違う鳥は小さなえさ台でも共存するのですが、同じ食性の鳥同士はよく競いあいます。大きなヒヨドリがメジロを追い散らし、あげくにちくちくついばんでいたミカンを袋ごと食べたりすると、「ギャングめ」と、気をもみました。 ヒヨドリの一部には南の島で冬越しするものもあります。 翌年の秋、野鳥の会の仲間とタカの渡りを見にいったとき、ヒヨドリが何百羽もの群れになり、南へ旅立つのを見ました。それが海上へ出ると急降下して、海面すれすれに飛んでいくのです。聞けば猛禽(もうきん)類に襲われないためとか。かれらも精いっぱい生きているのだと、自然のドラマに胸が熱くなったものです。 そう、自然はスケールの大きな絵本なのです。 自然は季節ごとに様子を変えてさまざまな姿を見せますが、小鳥がえさを求めて里に下り、寒い国から渡り鳥のやってくる冬こそバードウオッチングの季節、すてきなページを開いてくれます。 静岡市やその近辺にも、千羽以上のカモ類が来る麻機遊水池をはじめ、大井川や安倍川、富士川の河口などは、絶好の観察地です。 大人も子どもも双眼鏡の向こうに、美しい色や模様の水鳥を見たら、思わず歓声を上げるでしょう。羽毛の一本一本まで、意匠を凝らした芸術品のようで、何度見てもうっとりします。 「なんて名の鳥かな?」 「どこからきたんだろう?」 「何食べてるの?」 そんなとき頼りになるのが、図鑑や手引書です。 昨年、児童図書出版社から「野山の鳥」「水辺の鳥」の二巻として出た図鑑は、写真とともに、名前の由来や生息地、大きさ、習慣、食べ物、鳴き声、俳句の季語やことわざまで書かれていて、読み物としても楽しめます。 野鳥の名前を、ひとつずつ覚えるだけでも心がおどります。 子どもたちは、あのカモたちが、寒いシベリア方面から四千キロもの旅をして渡って来たなどと生態を知り、感動のページを重ねるはずです。 そして、図鑑のなかのまだ見ぬ鳥にあこがれ、出あえる日を夢見たり、ひとりひとりの心の中の自然絵本を完成させていくでしょう。 この冬、麻機遊水池には、日本ではめったに見られないコウノトリが来ています。そして、御前崎にはこれまた珍しいシノリガモやコクガンが、安倍川河口にはツクシガモが、羽を休めています。 (静岡子どもの本を読む会 望月正子) ▼すすめたい本▲ 「名前といわれ 日本の野鳥図鑑@野山の鳥 A水辺の鳥」(文・国松俊英 写真・堀田明ほか 偕成社) 「フィールドガイド 日本の野鳥」(高野伸二著 日本野鳥の会) 「みる野鳥記 身近な野鳥」全10巻(日本野鳥の会編 あすなろ書房)
テキストファイル化塩野裕子
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