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スースーは、とんがり頭の男の子。ネルネルは、大きなリボンをつけた女の子。二人ともなかなか寝ない子どもで、いつも眠くなるまで二人でお話を作って遊んでいる。 大男がやってきて明かりを消すところから、二人の物語が始まる。扉の前の見返しに、さりげなくそれが記されているが、実は裏表紙にも、黄一色の明るい部屋で闇を思わせる真っ暗な体に星をちりばめた大男が、明かりを消す場面が描かれている。表紙が、窓から星空が見える明るい室内で、夜だというのに元気一杯に遊んでいる二人が描かれているから、この表紙と裏表紙で物語の発端が語られるという仕掛けになっているのだ。こういった遊び心が象徴するように、この作品は絵本ならではの魅力と楽しさを十分に満喫させてくれる。 「ぼくらは まどのそとを みながら」と、スースーが言うと、「じーっと まってました」と、ネルネルが続ける。「くるかなあ」と、スースーが言うと、「くるわよ」と、ネルネル。明かりを消した緑の部屋に、濃紺の星空とともに針のない時計のお化けみたいなのが忍びこんできて、そこを通過することによって、二人は不思議で魔術的な幻想世界にいざなわれていく。睡眠前のあやしい時間と空間を超えて、二人の彷徨(ほうこう)する異次元幻想空間の旅が、特異な場面処理と色彩感覚で展開する。 何回見ても、そのたびに楽しめる絵本だ。(野上暁)
産経新聞 1996/07/19
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