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表紙の面白さにひかれて、「まあちゃんのながいかみ」という絵本を買い求めました。女の子が長い長い三つ編みの髪の毛を野原にぐるぐるまきに置いて寝そべっている表紙。なんとも面白そうじゃありませんか。 中身を読んで、ますますこの絵本が気に入りました。 長い髪の毛が自慢のはあちゃんとみいちゃんに対して、主人公のまあちゃんはおかっぱの短い髪をしています。でも、まあちゃんの 夢はずっとずっとずっとずっと、ずうーっと長く、髪の毛をのばすこと。その長いことといったら、高い高い橋の上から髪の毛でつりができるぐらい。それに、ぐるぐるまきにすれば、あったかいおふとんにもなって、お 外で眠れる。ぴんと張れば、家中の洗濯物がつるせるし、長くてひきずりそうになったら、パーマをかけて、小鳥たちの住む森になる。 まあちゃんのいきいきしたお話に、はあちゃんもみいちゃんも、うっとり溜息をつきます。「それって、たしかに とってもいい……」 小さい頃髪の毛が長い友だちがうらやましくて、何度も親に「髪の毛のばしてもいい?」と聞いたことを思い出しました。もちろん 親の答えはノーです。「長いとすぐぐちゃぐちゃになっ て、じゃまなだけ。第一、お前みたいなおてんばは、遊ぶときにひっかけて、痛い思いをするのが関の山」時には、「短い方が絶対似合うし、かわいいよ」とかなんとか色々な理由で言いくるめられてしまいましたが。 (大人も含めた)女の子たちに大人気の絵本「のはらひめ」がお姫さまになりたい、というおとぎ話のような(だからこそ、実は切実な!)女の子の夢をファン夕ジーの中で小気味よく描いているとすれば、この「まあちゃんのなが いかみ」は、女の子が、現実には出来ないとわかっていることを、豊かな想像力の中で実現させている本といえるでしょうか。 まったく違った絵柄に、全く違った物語、全く異なった手法で描かれた絵本ですが、どちらも、女の子たちの夢を見事に描いたとっても楽しい作品です。 お姫さまになんか興味ないわ、とか、髪の毛は短いのが一番、という人も、ぜひぜひ手に取ってみて下さい。とにかく愉快で、何度も開きたくなる本であることには変わりありません。(米田佳代子)
徳間書店 子どもの本だより「絵本っておもしろい」1996/1,2
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