イグアナくんのおじゃまな毎日

佐藤多佳子作はらだたけひで絵

偕成社 1997

           
         
         
         
         
         
         
         
     
 パパの大叔父の徳田のジジイが、あたしの十一歳の誕生日祝いにイグアナを持ってきてくれた。といっても、ていのいい厄介払いなのだが、断るわけにはいかない。 
 徳田のジジイというのは、パパが英語の先生をしている中学校の理事長で、ヤツのご機嫌を損ねると、パパはいつクビにされるかわからない。せっかく家を改築して、サンルームまで作ったのに、こともあろうにそこがイグアナに占拠されてしまうなんて。 
 それからがタイヘン。室温は二十五度以上、四十度以下に保たなくてはいけない。あたしは毎朝早起きして、特製のイグアナ・サラダを作らされる。 
 ヤダモンと名づけられた、傍若無人で無邪気なイグアナと一家の壮烈な格闘が執ように展開する。これがなんともコミカルで笑ってしまう。 
 予期せぬ異物の存在が、平穏な日常性をかき乱す。ところが不思議なことに、ヤダモンにだんだん親しみを感じるようになり、あたしは夏休みの宿題にイグアナの観察日記を書くことにする。そこに同じクラスの日高クンが加わる。 
 終章、まったく自分勝手な徳田のジジイは、急にヤダモンを返せとパパにいう。パパはそれを敢然と撃退してジジイを怒らせ、学校をクビになってしまうのだ。お邪魔なヤダモンをめぐる一家の毎日が、ユーモアたっぷりの軽快な文体でスピーディーに展開し、最後まで楽しく読ませる。(野上暁)
産経新聞 1997/12/23