一0歳からのクォーク

都筑卓司

講談社ブルーバックス 1989


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 物質は分子からできていて、分子は原子からできていて、原子というのは原子核のまわりを電子が回っていて……と、ここまでは中学校でも教えるところ。さて、そこからさきがどうなっているのかというのが、この『一0歳からのクォーク』である。
 早い話が、原子は陽子、中性子あるいは中間子という「素粒子」からできていて、これがなんと、さらに小さいクォークからできているのだそうな。「そうして現在の物理学の最先端はクォークを中心にして、これをあらゆる角度から検討しているのである」
 この本は、電子の発見やキュリー夫妻のラジウム発見の話からはじまり、様々な仮説や実験を経て、ついにクォークにいたるまでの長く曲がりくねった道筋を、ときにはユーモアをまじえ、ときにはずばり明解に語ってくれている。そしていきつく先は、宇宙のできはじめの「ビッグ・バン」。宇宙創造から十億分の一秒たった時点で、クォーク三個が結合して陽子や中性子を作り、さらにそれが集まって原子核を形成するようになった……と主張する超弦理論にまで進んでいく。 物理学というのは宇宙サイズのSFなのであります。
 姉妹編の『一0歳からの量子論』よりはむつかしく、数式もでてくるが、興味のある方はぜひ一読を。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/09/10