超少女へ

宮迫千鶴

集英社文庫


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 きょう紹介する本は、『超少女へ』−−と言っても、映画の「スーパー・ガール」みたいな強い女の子の話ではない。
 むしろ、強くならなきゃいけないと思ってて、でも、強がるばかりじゃむなしいとも感じてて、どこか分裂している。そういうやっかいな状態の女の子の話だ。と言えば、ほとんどの女の子が、私のことだ、と思うだろうから、これは普通の女の子の話だとも言える。
 ただ、この本の女の子の場合は、その分裂が極端すぎて、その分、逆にわかりやすい。《強い男》のカタマリのような父と《弱い女》のカタマリのような実母とママ母に育てられた少女時代。それを、三〇過ぎてそういうやっかいさをほとんど「超えて」しまった著者が、回想・整理・分析しているのだから。
 でも、同じ「超える」ならなるべく若いうちにしたいよね。と言う人には、『若草物語』論、『足ながおじさん』論、萩尾望都論などの応用編も付いてる。
 著者宮迫千鶴は、筆も握れば絵筆も握る、もっか活躍中の人。五年前の本だが、先月文庫化された。(横川寿美子)

読売新聞 1989/03