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あらすじは、ジャケットの折り返しがじつに巧みにまとめている。アメリカのオハイオ州からアイダホ州まで三千キロを、家出して帰らない母親に会うために、十三歳のヒロイン、サラマンカが父方の祖父母とともにドライブするが、途中、祖父母に友人フィービーの一家の出来事を語る。それが、結局三つの物語を構成するのである。 なぜ母親は家を出たのかという謎を縦糸に、フィービーとのつきあいを中心とした身辺のさまざまなできごとを横糸に、多様な家族と人間の模様を織り上げていく。子どもたちと大人たちの日常がリアルで興味深いので、サラマンカの母親が帰らない謎が絶えず気にかかる。 一見、よくあるパターンの作品だが、万事を女性主体で語り、こうした小説にありがちな既成のモラルへの回帰や妥協がまったくないのが新鮮。数多い人物もきちんと描き分けられていてそれも魅力だが、中でもサラマンカの祖父が秀逸。訳は平明で読みやすい。(神宮輝夫)
産経新聞 1996/08/23
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